本年度受賞企業

2013年度日本経営品質賞大規模部門受賞

滋賀県栗東市 カーディーラー

滋賀ダイハツ販売  株式会社

https://www.shiga-daihatsu.co.jp/

代表者:代表取締役社長 後藤 敬一 氏

  • 社員のやる気を引き出し、組織の魅力的価値を高める独自の革新活動を全社で展開
  • 車検・整備業務の標準化活動から進化し、部門間連携による顧客満足要因の磨き上げ
  • 顧客との親密な関係を創り出すため、カーライフを豊かにするサービスの自社開発
  • 現場の主体性と自立性を高めるボトムアップ型マネジメントスタイルを確立
  • 賢明で思慮深いメーカーとの信頼関係作りによって戦略の独自性を担保
表彰理由

 滋賀ダイハツ販売株式会社は、ダイハツ工業㈱の地域ディーラーとして、主に軽自動車の直販、県内自動車販売店・整備工場への業販、車検・整備などのアフターサービス事業を展開している。
2000年に経営品質向上活動に出会って以来、CSを経営の柱にすべく経営品質の考え方にもとづいた経営を実践している。先進企業へのベンチマーキングや関西経営品質賞、日本経営品質賞への挑戦で学んだことをすばやく取り入れ、社員を中心に顧客起点の革新を進めてきた。その成果として、全国ダイハツディーラーの中では、常に地域シェアとCS調査のランキング上位の両立を維持し、優秀ディーラーのポジションを確立している。顧客接点活動の活性化、変革の進め方などは、業種・規模を超え多くの組織の範となる。

社員のやる気を引き出し、組織の魅力的価値を高める独自の革新活動を全社で展開

 来店集客型で多店舗を展開する事業として、基幹プロセスの顧客対応力・営業力の品質向上と店舗間レベルの高レベルでの平準化をはかるため、組織横断のプロジェクト活動に力を入れている。特に、女性ユーザーが多い軽自動車の特徴に着目し、幅広い年代の女性顧客への接客サービスや店舗空間の居心地の良さを高める活動を担うカフェプロジェクトは、当社の中核的な価値創造システムになっている。各店舗から参画する女性スタッフが顧客の声に耳を傾け、自分たちのアイディアや工夫を加えて様々な改善提案を行う。女性目線でのサービス改善が好評価につながり、さらに活動のやりがいや働く楽しさにつながっていく好循環をもたらしている。こうした積極的ではつらつとした姿勢は、カフェプロジェクトメンバーに限らず多くの社員に見られ、顧客に対する心からのおもてなしの雰囲気と、新車購入時の高い顧客満足度につながっている。

車検・整備業務の標準化活動から進化し、部門間連携による顧客満足要因の磨き上げ

 車検・整備で来店した顧客をお待たせしないこと、徹底した安全・安心のサービスをお届けすることを最重要の満足要因として、サービス業務を標準化するサービススタンダードを全店で展開している。他県ディーラーに先駆けて導入した当初は店舗間のばらつきが出ていたが、顧客や車種の特性、組織体制に合わせて粘り強く改善・磨き上げに取り組んできた。これは、整備部門だけではなく、入庫予約を促進する営業活動、入庫前スケジュール管理、来店時の受付対応と店内各所との情報共有、店舗整備部門と車検センターの分業・協力体制、店舗改善推進室による定期的な支援など、緊密な部門間連携によって実現している。この結果、全国ダイハツディーラーの中でトップクラスの完成度と、車検・整備時の顧客満足度の高さを実現している。

顧客との親密な関係を創り出すため、カーライフを豊かにするサービスの自社開発

 ヒット商品・人気車種のあるなしに関わらずに、安定した経営ができるよう顧客との緊密な関係作りに力を入れている。地域柄、自動車は人々の暮らしに欠かせないため、生活に密着したカーライフを豊かにする様々なサービス開発が行われている。事例として、当社独自のDメイトポイントカード制度や、オリジナルのカーライフ情報誌「カルフェ」の発行などがあげられる。また、メーカーが提供する点検・整備のサービスパック商品を独自に発展させ会員特典の付加や中古車用パックなどを開発している。これらのサービス開発には、長期的・継続的に運用可能な制度設計のノウハウや、様々な関連する業務プロセスの改善が必要だが、これまでの顧客情報の蓄積や社内の知恵を集めることで実現している。

現場の主体性と自立性を高めるボトムアップ型マネジメントスタイルを確立

 かつてトップダウンのスタイルだった組織運営を、現場が主体となり自立的な社員を起点としたボトムアップ型の経営に変革している。現場の業務単位を分社とし分社長を中心に営業実績や利益額に責任を持たせ、店舗全体は店長がマネジメントするマトリックス型の組織を作り上げている。顧客からの声や競合に関する情報などを元に、現場で起きている課題に対してレビューと対応策を毎月検討するシステムとしている。直販、業販、整備、支援業務など業務内容が大きく異なり、かつ多店舗を展開している事業形態として、合理的な組織体制と言え、それが機能することで現場からの声が本部や経営幹部にも届きやすくなっている。

賢明で思慮深いメーカーとの信頼関係作りによって戦略の独自性を担保

 最も重要なパートナーと位置づけるダイハツ工業との深い信頼関係を築くための、賢明な対メーカー戦略がとられている。経営の自主性と地域特性などを踏まえた戦略の独自性を確保するために、率先してモデルケースを引き受け、自社にとってあるいは全ディーラーにとってメリットのある施策や制度となるように、積極的にメーカーに対して制度やシステムの改善や逆提案を行っている。販売台数などメーカーからの期待には確実に応える優秀ディーラーであり、メーカーの新施策を先行モデルケースとして積極的にトライしてくれる模範的なディーラーのポジションを常に維持している。

沿革・事業内容
業種 カーディーラー
設立 1954年
代表者 後藤 敬一
所在地 滋賀県栗東市
売上高 171億7,589万円(2012年度)
従業員 正社員391名(2013年5月末現在)

 滋賀ダイハツ販売(株)はダイハツ車の販売およびアフターサービスをするカーディーラーとして、1954年4月に設立されました。創業当初は、高度経済成長期にさしかかる時期でしたが苦戦をしいられ、8年目にはメーカーに資本を買いとってもらい事業を存続させることになります。その後、創業者の長男、後藤昌幸が経営再建をはかり4年で赤字を解消し1966年社長に就任します。その後はモータリゼーションの波にも乗り、「赤字は悪」「二位から下はすべて負け」という信念のもと、右肩あがりの成長を続けてきました。部課長制廃止、分社制の実施、能力主義人事、看板政策など数々の改革に取り組み、滋賀ダイハツの基礎を築きました。
 1994年、取締役、販売会社の社長を経て現社長の後藤敬一が社長に就任しました。当時、新車販売台数はダイハツグループの中でも常に上位にありながら、ダイハツ工業による「CSお客様満足度調査」では下位に沈んでいました。自分よりも年上の経営幹部と考え方を共有できず、「何か大きなことをやって実績をあげ認めてもらいたい」と焦っていた時期でもありました。
 2000年、経営品質の講演に参加した後藤は、CSは単独のものではなく経営の基本的な柱だという自覚を深め、お客様に「来てよかった、また来たい!」と思っていただける来店型の店舗づくりが始まりました。
 直接お取引いただいている「直販」のお客さまは、現在38,000台の車両があります。女性のお客様が多いことから、店舗から選ばれた女性スタッフが「カフェプロジェクト」を結成し、女性視点でくつろいでいただける店づくりをすすめています。また、整備品質を高める活動として導入した「サービススタンダード」の改善を継続的に取りくんでいます。
  一方、販売とアフターサービスを委託している販売店は、有力販売店のPIT店を中心に約600店とお取引いただいています。直販のノウハウを生かした販売店勉強会や店舗規模にあわせた支援体制で全国トップクラスの高シェアを維持しています。

経営品質向上活動への取り組み

 2000年、経営品質の考え方に接し、CSを向上させる取り組みとして経営品質向上活動を開始しました。「経営理念・社是」を経営品質の4つの基本理念をとりいれたものに変更、経営幹部の地域JQA勉強会への参加、セルフアセッサーの取得、経営品質向上委員会の立ち上げと次々に実施しました。
  委員会自体は内容の難しさから停滞ぎみでしたが、経営品質の考え方を取りいれた経営方針を毎年策定し、それにもとづいた経営を実践することで、年を追うごとに「CSお客様満足度」の数値は飛躍的に向上しました。徐々に経営品質の考え方が社員に浸透してきたのです。その後は、メーカーの総合表彰や栄誉賞を連続で受賞するディーラーとして成長しました。
  2006年「セルフアセスメントを実施し関西経営品質賞に応募する」と後藤が年初に方針を出しましたが、かけ声だけに終わってしまいました。実際にセルフアセスメントができたのは2008年になってからです。そこで2009年に関西経営品質に申請し、奨励賞をいただきました。その後は、日本経営品質賞に2度申請し、より高い評価をいただきました。申請を通じて成熟度レベルを向上させることができたのです。
  経営品質向上活動で大きく変わったことは、組織と社員の能力が向上したことです。以前は、方針やベンチマークで得た成功事例を展開しようとしても徹底できず、途中で立ち消えすることもしばしばありましたが、現在では取りいれたことをすぐに実行し、さらに工夫を加えることができるようになりました。
  今後は、日本経営品質賞受賞組織としての自覚をもち、さらに経営品質向上の取り組みにつとめてまいります。