本年度受賞企業

2013年度日本経営品質賞大規模部門受賞

大阪府大阪市 外食

株式会社  ワン・ダイニング

http://www.1dining.co.jp/

代表者:代表取締役社長 髙橋 淳 氏

  • 「基本の徹底」による店舗価値向上に向けた継続的な取り組み
  • 第一線のアルバイトの戦力化と成長の場の提供
  • スピード感をもった改善・革新に向けた取り組み
表彰理由

 株式会社ワン・ダイニングは関西地区を中心に、本年から九州地区を商圏に加え、主に郊外を中心に焼肉レストラン、しゃぶしゃぶレストランの事業を展開している。また、本年より別会社で牛たん店「杜もと」の事業展開を開始した。
 当社はやみくもに出店して規模の拡大を図るのではなく、一店舗ごとの価値を高めることを基本戦略と定め、店舗価値を高めることで、お客様、お取引先様、地域社会、そして従業員の幸福を達成したいという思いから「幸福価値の創造」の実現を理想的な姿に掲げている。
 食肉小売事業が母体であったことから、肉にこだわりをもち、セントラルキッチンをもたず、店舗ごとに肉の加工を行うことで新鮮でおいしい肉を提供することを独自価値としている。また、アルバイトをはじめとした従業員の教育を重視し、ホスピタリティを高めることでお客様から感謝され、仕事にやりがいと誇りをもち、成長する機会を創出している。これは従業員の幸福の実現につながることを意図している。さらに、年2回グランドメニューを変更し、年4回季節メニューを導入することで、お客様が飽きない工夫を行っている。上質で居心地の良い店舗づくりにも注力している。

「基本の徹底」による店舗価値向上に向けた継続的な取り組み

  当社は「基本の徹底」を重視し、「商品」、「接客サービス」、「上質で居心地の良い空間」のレベルを高めることで店舗価値を向上させている。商品の根幹である食肉については、仕入れにおける品質・鮮度管理の徹底、食肉加工技術の向上、メニュー開発の取り組みを強化した結果、外部調査による美味しさの評価は上昇傾向にあり、お客様から商品が評価されている。接客サービスにおいては、ガイドブックの活用を通じてサービスレベルの標準化を推進め、基本の徹底を図る一方、サービスレベルを高めるために、お客様への目配りによる事前察知や、お客様から呼ばれる前の積極的な声かけなどにより、来店中のお客様ニーズをタイムリーに把握し、従業員が気づいたことを気づきプログラムで共有している。上質で居心地の良い空間について、出店地の決定は、商圏、投資回収期間など明確な出店基準の元で計画を展開し、2006年6月以降、退店数はゼロとなっている。出店後は、時代を捉えたデザインで、外観・内装とも詳細にわたってこだわる店舗づくりを行い、外部調査による活気・雰囲気の評価は2009年度以降上昇し、お客様からも評価されている。
 これらの店舗価値向上に向けた継続的な取り組みの結果、外部調査による総合評価、顧客ロイヤリティは上昇しており、特に総合評価においては、焼肉業態ではベストプラクティスの水準に近づき、しゃぶしゃぶ業態では和食業態のベストスコアを獲得している。

第一線のアルバイトの戦力化と成長の場の提供

 店舗価値を高めるために、アルバイトを有効に活用し、戦力化しているとともに、人間としての成長の機会を提供している。新店舗オープン時には、経営理念や組織の価値観などを徹底することを含め、約1か月の教育訓練を実施している。店舗内のトレーナーによる新人アルバイトへのOJTの実施、アルバイト交換研修、アルバイトリーダー研修などの実施により、他店舗の取り組みを学習する機会を設けている。アルバイトの戦力化で最も独自性のある取り組みとして、月1回、アルバイト主体のアルバイトミーティングを実施しており、店舗における情報の共有化と課題に対する改善策の検討を行い、アルバイトの主体性や店舗運営への参画意識の向上につなげている。更に、アルバイト個人の気づきを深める気づきプログラムもアルバイトの成長に有効に機能している。業務で得られた気づきを「気づきメモ」に書き、店舗内で展示することにより、アルバイト個人の気づきを深めるとともに、他の従業員からコメントを受けることで、モチベーションが向上し、気づきの連鎖を促進する仕組みとなっている。

スピード感をもった改善・革新に向けた取り組み

 アセスメントや外部調査などにより明確になった課題についてはスピード感をもって改善・革新に取り組みが行われている。「課題となっている提供時間短縮のための取り組み」、「アルバイトに経営理念・組織の価値観をより一層伝えるためアルバイト向け社内報『en』の発行」、「アルバイトから社員に登用するためのプロジェクト」、「接客力を高めるためのベンチマーキングの実施」、「お客様のアレルギーをアルバイトが確実に確認するためのハンディターミナルの変更」、「障がい者雇用の積極的な取り組み」など数多くの改善・革新に向けた取り組みを行っている。

沿革・事業内容
業種 外食
設立 1972年
代表者 髙橋 淳
所在地 大阪府大阪市
売上高 170億4,549万円(2013年3月期)
従業員 4,567名

 当社は1965年に創業いたしました。創業時は鯨肉の販売を行っておりましたが、1967年からは食肉小売事業へ事業転換し、1972年に株式会社化、1978年には牛肉、豚肉、鶏肉を扱う総合食肉専門店へと業容拡大いたしました。その後、より多くの方へ食肉文化を広めたいとの思いから、1993年から外食事業として焼肉レストランの店舗展開を開始いたしました。しかし、2001年の国産牛、2003年の米国産牛のBSE問題が発生し、外食事業は債務超過状態に陥り、事業の抜本的な改革に迫られました。
 そこで導入したのが、2006年からスタートしたテーブルオーダーバイキングです。座ったままお好きなものをお好きなだけご注文いただけるスタイルと共に加工センターを廃止し、肉を扱う技術とノウハウを活かした店内加工に全店変更実施しました。2008年10月には会社分割を行い、ダイリキ株式会社から株式会社ワン・ダイニングへ商号変更を行うとともに外食事業に特化した会社となりました。
  現在フルサービスのテーブルオーダーバイキングスタイルの食べ放題店として焼肉レストラン「ワンカルビ」「あぶりや」としゃぶしゃぶレストラン「きんのぶた」を関西と九州に89店舗展開しています。常にお客様の期待を超える満足度を目指し、「商品」「接客サービス」「居心地感」の基本的な店舗の価値向上に取組み続けています。
 そうした店舗価値向上を支えているのは社員・アルバイトであり、チーム・ワンダイニングとして理念や目指すべき姿を共有すると共に、全員が「考え・行動する」組織作りに取り組んでいます。
 これまでも、そしてこれからも当社の経営理念である「価値ある経営」のもと、常にお客様、お取引先様、地域社会、そして従業員へ価値を提供し続けることで、当社に関わりのある全ての方の「幸福価値創造」を目指しております 。

経営品質向上活動への取り組み

 当社は経営理念である「価値ある経営」実現のため、店舗作りにおいては、一店舗一店舗「良い店」を作ることに取り組んで参りました。しかし、その成果として、店舗数も従業員数も増え、かつ、更なる価値向上のためには基盤となる「経営の品質」を向上させることが絶対必要条件であると実感しておりました。
 2011年に弊社社長の髙橋が経営品質向上プログラムと出会い、経営品質向上プログラムの各カテゴリーに基づき、当社の強みと課題の整理を行い、第三者からの客観的な視点から「経営の品質」を改善していくことを決定しました。そして、翌2012年度に日本経営品質賞に初めての申請。結果はA-となりましたが、その後の審査員によるフィードバックに基づき改善を積極的に進め、今年度再申請を実施し、栄えある賞を受賞するに至りました。
 当社では、店舗価値の向上をはかるためには、人材育成が最も重要であると考えております。店舗は人間的成長の場であると位置づけており、それに向けた様々な仕組みづくりと推進に力をいれてまいりました。その中のひとつである「気づきプログラム」は、褒める風土を現場に根付かせ、アルバイトの人間的成長や仕事に対して前向きに取り組める姿勢を養うことにつながり大きな成果がでております。
 また、経営幹部からアルバイトに至るまで同じビジョンを共有するための仕組みづくりや、中期経営計画と連動させたBSC(バランススコアスカード)を取り入れ、PDCAのスパイラルアップサイクルの確立を図っております。今後も今回の受賞を励みに現状に満足することなく、お客様から・お取引先様から・社会から・そして共に働く仲間から必要とされる店・会社であり続けるために、常に卓越した経営を継続的に実践してまいります。