本年度受賞企業

2014年度日本経営品質賞大規模部門受賞

鳥取県米子市 介護、保育他

社会福祉法人  こうほうえん

https://www.kohoen.jp/

代表者:理事長 廣江 研 氏

  • こうほうえんに関わる全ての人への『個の尊厳』、『互恵互助』への弛まぬ思いと実践
  • 地域の信頼を得る利用者と家族の質の高い暮らし(QOL)の実現
  • 組織ビジョン浸透を地域社会に拡大することによる地域包括ケアシステム構築
表彰理由

鳥取県内に介護事業所拠点91を運営するほか、法人としては医療、保育、障がいサービスまで含め東京でも事業を展開している。正規職員1,066名、非正規職員368名。売上高76億円。理念ビジョンに基づく地域包括ケアシステム構築、QOL実現などを実践

こうほうえんに関わる全ての人への『個の尊厳』、『互恵互助』への弛まぬ思いと実践

社会福祉法人としての使命感とともに、「互恵互助」を職員の大半が日常の延長線上の当たり前として地域の暮らしに密着した貢献活動を通じて実践している。
●法人の価値観をまとめた「互恵互助」冊子による全職員への浸透
●「個の尊厳」を根底に、利用者に良いことは「まずやってみる」とする組織風土
●「責任は最後は俺がとる」というトップのコミットメント
●“行政に金がなければ我々、社会福祉法人がまかなってでも取り組む”姿勢
    ・法人独自の減免制度による生活困窮者への対応
    ・一般的には受入が困難な利用者の受け入れ

地域の信頼を得る利用者と家族の質の高い暮らし(QOL)の実現

 職員の高い意識に支えられ、利用者とその家族の共感と感動を与えるサービス品質を生み出し、高レベルのQOLを実現している。
●入所前の利用者の暮らしを理解し、趣味・嗜好、育った環境、表情の変化から満足・不満足要因を把握
●身体拘束ゼロ、オムツ廃止など、介護常識を覆し、『個の尊厳』重視による自分らしい生き方をサポート
●サービスを客観的に評価するDCM(Dementia Care Mapping)等による、サービス内容の妥当性検証
●外部評価機関評価をもとにしたサービス改善とその公開による、透明性、健全性の強化
●利用者・家族の終末に対する意向や医師の意見を交え、「看取り」まで寄り添う組織全体で取り組み実践する姿勢
●看取り後も職員が家族に真摯に向き合い、家族のQOLを見守る心繋がるプロセス

組織ビジョン浸透を地域社会に拡大することによる地域包括ケアシステム構築

「地域社会との互恵互助の信頼関係をもとにした地域包括ケアシステム構築」を2025年の法人の姿として、県内各都市において地域包括ケアシステムの構築のモデルケースを目指した活動を行っている。
●地域包括ケアシステム構築のための国・諮問機関、県、市、業界、地元医師会へ日常的働きかけ
●地域に密着し迅速なサービス提供を目指して導入したエリア制度

沿革・事業内容
業種 介護、保育他
設立 1986年
代表者 廣江 研
所在地 鳥取県米子市
売上高 7,614百万円(2013年度)
従業員 1,434名(2014年4月現在)

 私どもは1986年7月、鳥取県境港市に特別養護老人ホームを開設したことに始まる社会福祉法人です。鳥取県を中心に介護、保育、障がい、医療サービスを提供しています。
 法人設立時から理念である「わたくしたちは 地域に開かれた地域に愛される 地域に信頼される『こうほうえん』を目指します」に基づき、地域住民が必要とする福祉サービスを常に考え実践することで、地域に無くてはならない法人になることを目指してきました。地域で最も質の高いサービスを提供するため地域ニーズの実現、外部の視点の積極的な導入、根拠に基づくサービスの提供、社会福祉法人の使命達成を行ってきました。
 人里離れた場所に施設を建てるのが当たり前の時代、小学校の隣地を法人設立の地に定めるとともに、1992年に地域住民のニーズに応えるため法律の壁を乗り越えた全国初の合築施設を建設しました。2001年には利用者の尊厳を奪わないサービス提供を法人の主軸とするため「抑制廃止宣言」を表明し、経験と勘が重視された介護業界において職員に依存するサービスから脱却するため、2001年に社会福祉法人で初となる法人全体でのISO9001の認証を取得しました。更に客観性、根拠に基づいた介護サービスの提供を図るため、2008年から慶應義塾大学とケアノウハウの見える化に関する共同研究を進めています。
 これらサービスの質を高める活動とともに、私どもは「社会福祉法人」としての使命を重視しています。社会福祉法人はその設立経緯からも民間企業以上に社会的責任が大きい非営利組織です。福祉制度の谷間で困っている社会的弱者と呼ばれる地域住民に対し、ソーシャルワークや直接的な費用減免により非課税とされている以上のものを地域に還元しています。
 福祉業界は民間企業に比べまだまだ未成熟です。実践を通じて理想とされる福祉サービスを追究し、その結果を全国に発信することで日本の福祉レベルの向上に寄与できればと考えております。

経営品質向上活動への取り組み

介護保険法の施行を迎えた2000年前後から、事業拡大により理事長が直接指示命令する体制に限界が訪れ、職員の意識やサービス内容に差が出できました。経営の質とサービスの質の両立を模索していた頃、交流していた米国の法人からマルコム・ボルドリッジ賞を紹介され、日本経営品質賞の存在を知りました。2004年に認定セルフアセッサー1名を養成し経営品質向上活動を開始、2006年に経営幹部による1年間の話し合いを経て法人の価値観を明文化し、2007年から価値観実現の視点で重要課題を中期目標に落とし込み、各施策の導入、全事業への展開を行ってきました。一時期、新規事業開発等の影響により活動が停滞しましたが、2011年度から認定セルフアセッサーを8名追加養成し活動を再開。2013年度に介護分野における日本経営品質賞パイロット審査を受審し、フィードバックレポートにより一層明確になったカテゴリー別の課題を目標に反映し、改善を図っています。
 少子高齢化、社会保障制度改革等、福祉業界を取り巻く環境は激変しています。私どもが常に挑戦・実践し続けることにより、日本の福祉を良くする一石となればとの想いで、これからも経営品質向上活動を続けていく所存です。