本年度受賞企業

2015年度日本経営品質賞大規模部門受賞

大阪府大阪市 ビジネスホテル

株式会社スーパーホテル

https://www.superhotel.co.jp/

代表者:代表取締役会長 山本 梁介 氏

  • 「1円当たりの顧客満足日本一」にむけた理念、仕組み、体制の一体化
  • IT活用による模倣困難なローコストオペレーションとマネジメントノウハウ
  • 顧客満足を目指したチーム――「自律型感動人間」集団の拡大
  • 新たなホテルスタンダードを目指した「Lohas(ロハス)価値」の追求
表彰理由

 スーパーホテルは、国内ビジネスパーソンを対象に低価格でも「安全・清潔・ぐっすり眠れる」顧客ニーズに応える独自のビジネスモデル構築で2009年に日本経営品質賞を中小規模部門で受賞した。ところが、リーマンショックを機にシティホテルの低価格戦略で競争が激化。それを需要と競合ホテルの動きを考慮した変動価格設定ができるイールド・マネジメントの導入で凌ぎ、稼働率は向上した。しかし、イールド・マネジメントの導入は、顧客が求める価値を「価格から品質に」変える両刃の剣であり、経済性だけを追求すると、「ホテルチェーン全体」の経営品質が失われる。そこで価値を「低価格」から「1円当たりの顧客満足日本一」へと転換し、社内評価指標も「稼働率」から「顧客からの外部評価」へと変更した。今回の受審がホテルチェーン全体(大規模部門)に変わっていることが象徴するように、顧客と接するアルバイトにまで拡大した人材育成の仕組みづくりや店舗経営支援、全員で共有できる顧客情報システムの構築により、ホテルチェーン全体で「1円当たりの顧客満足日本一」を提供できる体制を整えた。同時に、イールド・マネジメント導入に当たって、ターゲット顧客を改めて、国内ビジネスパーソンと再確認し、急増する女性客も意識している。高価格で贅沢なサービスではなく、Lohasな価値を提供するもの――健康で安全な食事、環境に配慮した建物等――に資金を投入しており、男性客もその価値に共感し始めている。また、インバウンド需要でホテル価格が上昇する中でも、団体客は受け付けず、国内ビジネスパーソンが泊まりやすい価格帯に抑えた運営を続けている。
この結果、ビジネスパーソンの満足度やリピート率は高水準を維持、J.D.パワーの2014年度ホテル宿泊客満足度No.1(1泊9000円未満部門)、JCSI(日本版顧客満足度指数)2014年ビジネスホテル業界顧客満足1位、同サービス32業種満足10位、同サービス32業種将来の再利用意向2位を獲得した。ビジネスモデル構築で日本経営品質賞を受賞した2009年以降の顧客本位にむけた経営変革は、経営品質活動の進化した姿であり、サービス業全体、組織変革をめざす組織のベンチマーキング対象となる。

「1円当たりの顧客満足日本一」にむけた理念、仕組み、体制の一体化

 「1円当たりの顧客満足日本一」という理念を掲げ、顧客視点に立った利用しやすい予約システム、ビジネスパーソンに直前までお部屋を確保し、泊まりやすい価格帯を提供する仕組み、過去の宿泊履歴を見ながら会話できる接客体制が一体となって運営されている。結果として、高いリピート率を維持、JCSI調査、J.D.パワー調査の結果ともに2014年は初めてNO.1を獲得。ワンランク上のホテルを含めた競合ビジネスホテル比較でも、稼働率、客室当たり単価で業界No.1を獲得している。

IT活用による模倣困難なローコストオペレーションとマネジメントノウハウ

 「1円当たりの顧客満足日本一」になるために、運営計画と適正人員配置、予約管理・残室管理・チェックイン・顧客管理に店舗会計を統合した「ホテルシステム」などの自社開発のITシステムを導入している。また、ノウハウを生かしたローコスト化と居心地・快適さを両立させる設計・建築で店舗開発ノウハウを強化してきた。結果として、営業利益率も2009年以降、業界平均を大きく上回っている。

顧客満足を目指したチーム――「自律型感動人間」集団の拡大

 2009年度以降も継続する「自律型感動人間」の育成をアルバイト・アテンダントまで拡大した。具体的には、理念・価値観の浸透と、支配人・副支配人のライセンス評価、正社員・アルバイトの目標管理制度を進化させた。結果として、離職率は2009年から大きく減少、各層別の従業員満足度調査も高水準を維持し続けている。

新たなホテルスタンダードを目指した「Lohas(ロハス)価値」の追求

 2009年から「Lohas(環境・健康)価値」を提案、経営幹部自らのリーダーシップで外部専門家との協働で商品・サービスを開発・改良を行っている。長期的には「Lohasブランド」、短期的にもLohas名称のホテルで共感する女性客の利用が5年間で2倍にも拡大、ビジネスパーソンもこの価値に目が向き始めている。今では社員一人ひとりがビジネスを行う際の目指す姿となり、新たなホテルスタンダードの構築に取り組んでいる。

沿革・事業内容
業種 ビジネスホテル
設立 1989年
代表者 山本 梁介
所在地 大阪府大阪市
売上高 249億円(平成27年3月末日)
従業員 1,515名(平成27年3月末日)※業務委託・パート・アルバイト含む

 スーパーホテルは、自律型感動人間の育成と理念の浸透を通じて、頻繁に出張するビジネスパーソンと交流顧客をターゲットとし、「安全・清潔・ぐっすり眠れる」Lohasな空間をローコスト・ハイクオリティで創造し、お客様に元気になっていただくホテルを目指しています。「日常の感動とLohasによるイノベーション」をキーワードに画期的なサービス・仕組みを採用し、国内で111店舗、海外に3店舗を展開しています。
 1970年からシングルマンションビジネスを展開するとともに、1990年にシティホテルビジネスに参画しました。その後、時代変化と成長機会を活かすためにノウハウを活用し、スーパーホテルというブランドで宿泊特化型のホテルビジネスを開始しました。開設当時から地域を支援するビジネスパーソンに「安全・清潔・ぐっすり眠れる」という価値提供を追及し、ビジネスパーソンが宿泊しない土日祝日の稼働の問題を解決するため、地域交流人口の増加に着目して、交流顧客にも喜んでいただけるサービスを開発してまいりました。創業以来「ぐっすり眠れる」環境創造を追求し続けるなかで、全世界でのLohasニーズの高まりを予測し、宿泊特化型のホテルでの本格的Lohas価値として「環・眠・食・気・地域」という独自コンセプトを打ち出しています。

経営品質向上活動への取り組み

 2009年に日本経営品質賞を受賞するまでの過程で、目的実現の方法を振り返り、より高い価値を創るためのプロセス改善に取り組むことができるようになり、経営品質向上活動が組織能力を上げる要因になることを認識しました。受賞後も、経営品質向上会議を継続し、半期に一度指標レビュー会による振り返りを重ね、継続的に経営品質向上活動を実施してきました。社会の経済的な価値も変化し、高品質の値頃感のある商品・サービスへの関心の高まりに応じて、さらなる独自性を追求するため、「安全・清潔・ぐっすり眠れる」のコンセプトに新たに「Lohas(環・眠・食・気・地域)」を加え、お客様にLohasを啓蒙することを経営品質向上活動の課題としました。
 また、売上・稼働率の結果を生み出す顧客満足度評価を重視し、2009年以降、20項目の新たな仕組みの構築およびスパイラルアップを行ってきました。特に、「NO.2育成(アテンダント育成)」「ワークスケジュール(適正人材配置による生産性向上)」「イールド・マネジメント(需要に応じた適正価格設定)」の3つのマネジメントに注力してきました。その結果、外部評価機関において顧客満足度NO.1を受賞し、売上・利益も右肩上がりになりました。
 しかし、結果が良いという現状に満足していることに新たな危機感を感じ、再度、経営理念に立ち返り、独自価値としての「Lohas」を実現するマネジメント能力を確認するために、2度目の日本経営品質賞に挑戦しました。挑戦を通じ、これまでのやり方にとらわれない独創的な価値創造の方法を追求し始め、部門を超えて自律的な相互連携を図る組織へと変革してきました。
今後も経営品質向上活動を通じ、自律型感動人間の育成をより強化し、「どこにもない、誰にもできない」イノベーションを実現していきたいと考えています。