本年度受賞企業

2017年度日本経営品質賞中小企業部門受賞

福岡県北九州市小倉北区米町 保険代理業

トップ保険サービス  株式会社

http://www.top-hoken.com/

代表者:代表取締役社長 野嶋 康敬 氏

  • 本業は「売る」ではなく「顧客対応」
  • 顧客対応力強化のため全国保険代理店の組織化を主導
  • 業界課題を克服する迅速な構造転換
  • 潜在ニーズへの提案を具体化する組織的顧客理解
  • 本業(顧客対応)のレベルアップをめざした独自育成体制
  • 後継者育成・事業継承をめざした独自の仕組み
  • 新卒者獲得を可能にする地元信用度「顧客対応」
表彰理由

業績は好調で、一人あたり売上高(手数料収入)、経常利益率は業界平均と比べて高水準となっている。保険代理店というありふれた業種で、一見、優良顧客を持っているが故の好業績企業のように見えるが、その実態は、業界の一般的な経営目標や常識にとらわれず、独自の顧客価値を定めることで、同業者とは全く異なるビジネスモデルを構築し、成功している事例といえる。

本業は「売る」ではなく「顧客対応」

「弱っている人々の楯になる」ことを企業コンセプトとし、「事故対応こそが本業」と位置付けることで、保険会社の代理というより、お客様の代理となるべく、保険代理店の本来のあるべき姿を追求している。すなわち、保険商品を売ることよりも、顧客の損害補償やリスク管理のための業務を主とし、「現場急行」「現場確認」「現場での助言」を基本とする事故対応や、様々な企業リスクを想定したリスク・シミュレーションやリスク・マネジメント研修等を提供している。事故対応については、自動車事故だけでなく、火災やPL事故なども同様に現場対応を行う。リスク管理メニューは海外PL訴訟から自然災害まで、多岐にわたって用意されている。これらは、同業他社が容易に追随できない独自のサービスといえる。

顧客対応力強化のため全国保険代理店の組織化を主導

また、広域に拠点を展開する大企業顧客のニーズに対応するため、九州や全国の優良保険代理店をネットワーク化したNPO法人全九州ヘルプネットやSHIELDS/シールズ(登録商標)設立を主導している。保険代理店が主導して設立し、同業者相互で事故サービスを代行するような組織は類を見ない。2年前の申請時にも、これらのネットワーク組織は既にあったが、2017年時点で加盟代理店数が300社を超えるまでになっている。

業界課題を克服する迅速な構造転換

そして、損害保険業界全体の課題である自動車保険依存体質からの脱却にもいち早く成功し、独自に企画した新種保険に軸足を移して収益構造の転換を進めている。自動車保険が先細りする中でも、業界全体では自動車保険が依然として60%を超えている。同社も2004~5年当時は、全体とほぼ同じ構成だった。しかし、同社は賠償責任保険や傷害保険などの新種保険の売り上げを増やし、2016年には、新種保険の比率が47%にまでなり、自動車保険の比率を31%にまで下げている。

潜在ニーズへの提案を具体化する組織的顧客理解

実際、企業顧客の担当者との日常会話を通して、顧客特有の経営課題から潜在的リスクを抽出し、それをカバーするオリジナル保険を先回りして自在に企画・設計して話題にあげ、布石を打ってきた。例えば、人事担当者から社員のメンタルヘルスの悩みを聞いたことをきっかけに、精神疾患も補償対象とするサービスを持つ専門会社と提携して、大手保険会社の保険GLTD (団体長期傷害所得補償保険)と組み合わせたオリジナルの福利厚生制度を4年がかりで提案し、昨年契約している。これも、一般的な保険代理店では考えられないことである。この福利厚生制度は、TOTO (株)グループ向けに開発されたが、今後は他の顧客にも提案される計画である。

本業(顧客対応)のレベルアップをめざした独自育成体制

損害保険、生命保険の業界団体では、保険代理店の社員を対象に、生保大学、損保大学というWeb学習システムを作り、保険を売るための業界統一の販売員資格制度を運営している。それに対して、同社では、本業と位置づける事故対応などに関する独自の人材育成プログラム「黒帯審査会」を開始して(2年前の申請時にはなかった)、保険業務に関わる様々な知識・ノウハウの組織的移転と体系化を進めている

後継者育成・事業継承をめざした独自の仕組み

また、既に3名の部長級幹部にリーダークラスを加えた管理職会議での合議体制になっているが、さらに、大口顧客からの「社長一人の会社であっては困る」という要請もあり、社長の「自分の子に継がせるつもりはない」宣言もあって、年に一度の「TSD(次の社長は誰だ)総選挙」を3回実施しており、次世代の自覚を促している

新卒者獲得を可能にする地元信用度「顧客対応」

東京海上日動が実施している代理店満足度調査(保険契約者が対象)では、全国No.1の常連となっており、従業員満足度も高く、新卒者の入社後3年以内の離職率も低い。保険代理店は不人気業種であるにもかかわらず、同社の場合、「個人ノルマなし」「新規営業なし」などの方針もあるが、地域での知名度や信用度が高く、「全員面接」を経て、毎年1~2名、7年間で13名の新卒大卒のみを採用し続けている(うち退職者は5年前の2名のみ)。

沿革・事業内容
業種 保険代理業
設立 1994年(創業1926年)
代表者 野嶋 康敬
所在地 福岡県北九州市小倉北区米町 1-3-1 2F トップ保険サービス株式会社
売上高 353百万円(2016年度)※年間取扱保険料 損保1,557百万円・生保709百万円
従業員 28名

トップ保険サービス株式会社は、創業以来「保険の価値は、お客様の万が一のときにある」という基本的な考え方を根本におき、本年生損保17社を取り扱う保険代理店として本年創業91年目を迎えました。
お客様にとって、常に頼りになる最強の「楯」となることを企業理念として、その理念に合致した人材の採用、育成に力を注ぎ、新規営業開拓を行わず、保険会社のキャンペーンなどにも参加せず、ただ既存のお客様を徹底的にお守りすることで順調に業績を拡大させて頂き、現在では1500社17,000人を超えるお客様の保険を管理させていただくまでになりました。また、遠方のお客様の万が一に迅速に対応できるよう、保険代理店同士の全国規模のネットワークを構築し、拡充に努めています。
保険は「リスク管理」におけるリスク転嫁の1手法であることにすぎないことから、お客様のリスク管理やリスク低減活動を積極的に関与し、2005年以来、海外を含め145回に及ぶリスク・シミュレーションや毎年40回以上のリスク研修を実施して、事故が発生する前のリスク管理サービスを行っております。近年では、そのノウハウを活用して、北九州市内の小学校で災害時の対応研修を行うなど「弱っている人を助ける」社会貢献活動にも役立てています。

経営品質向上活動への取り組み

当社が経営品質と出会ったのは2002年のことでした。仕入先である保険会社が、「保険代理店も組織化を」、「保険代理店を家業から企業へ」との方針を打ち出し、その一環として我々保険代理店に経営品質を学ぶ機会を作ってくれました。それ以来、経営品質の「お客様本位」の考え方を基に、多くの経営品質企業様を実際に訪問しての研修や、現在まで毎月継続している「経営品質会議」でDOIT!ビデオを活用しての研修を続け、課題の解決には「お客様だいすきチーム」や「みんなだいすきチーム」といったプロジェクトチームでの取り組みを行いました。当然会社方針も経営品質を中心としたものとなり、「徹底したお客様サービスの追及」を目指しました。また2007年には情報セキュリティの国際認証ISO27001を取得し、PDCAの運用や役割分担による自立した組織の運営も定着しつつありました。
ところが2014年に大きな転機が訪れました。当社社長が同業者の会で経営品質のお話をお聞きする機会があり、講師の先生から「今重視すべきは従業員である」こと、すなわち会社は従業員にとって「A Great Place to Work」である必要があるということを学び、同年9月から「パート社員を含めた全従業員によるA Great Place to Workへの道」という取り組みを開始しました。とにかく全員で経営品質を学び、全員で5年~10年先の中長期的なビジョンを作成するなど、全員参画の経営を目指した活動を行いました。
翌2015年には、当社の重要取引先の専務様から経営品質賞の申請をしてフィードバックを受けてみてはどうかとのアドバイスもあり、初めて基準書に則った申請書を提出させていただきました。
その際、奨励賞とともに詳細なフィードバックを戴き、組織体の見直し、見直す為の仕組み、会社としての意思決定方法の変革等、様々な取り組みを行いました。現在は各会議体、プロジェクトチームが自律的に目標を設定し、それに向かって活動しています。
当社としては経営品質との出会いにより、2026年の創業100周年を見据えた大きな指針を授けていただいたことに感謝し、これからも真の「A Great Place to Work」を目指して社員全員で頑張って参りたいと思っております。