本年度受賞企業

2020年度日本経営品質賞非営利組織部門受賞

神奈川県横須賀市 医療

国家公務員共済組合連合会  横須賀共済病院

https://www.ykh.gr.jp/

代表者:病院長 長堀 薫 氏

  • 【職員と危機感を共有し、病院再生に着手】
  • 【地域連結型医療体制の構築を推進】
  • 【病院理念への職員の共感と組織活性化】
表彰理由

<特徴・成果>
●地域医療の中核を担う総合病院として、先端医療・がん治療・救急医療を3つの柱として、高度で先進的な医療を提供。三浦半島入院患者シェアは50%を超える。病床数は740。
●病院の方向性が定まらず、医師不足等多くの問題を抱え赤字寸前の危機に陥っていたが、2013年に現病院長の長堀薫氏が赴任し、経営改革がスタートした。
●職員の意識改革や患者紹介・退院患者受け入れを行う他施設との連携強化により、平均在院日数を短縮(2013年12.4日から2019年9.4日)してベッドを確保、これまで20%断っていた救急車の全応需を可能にし、救急車受入台数は年間1万台を超え、手術件数は年間7,500件に達している(全国30位以内を継続)。
●全職員がホスピタリティを持ち、成長や達成感を味わえる病院を目指して、ホスピタリティ研修や手厚いキャリアップ支援を実施。現在、入院患者満足度は96%、14%台だった看護師の離職率は8%台へ低下。
●内閣府のAI事業にも一般病院として唯一参加し、AI技術を活用した業界における課題解決や生産性向上に取り組んでいる。
 神奈川県の横須賀・三浦医療圏で高度急性期医療を担う740床の総合病院。2013年には救急車を20%以上断り、手術も10%減り、職員の士気も落ちており、赤字寸前の状態だった。現病院長の長堀薫氏が2013年に他病院から同院に戻り、病院の再生が始まった。
 2015年から掲げるビジョン「高度急性期病院であること、マグネットホスピタルを目指すこと」がこの病院の今をよく表している。

【職員と危機感を共有し、病院再生に着手】

 2013年11月に院内で緊急集会を開き、①小児科医師確保、②救急車全応需、③手術件数増加の3つのポイントをクリアしないと赤字に転落し、新しい医療機器も導入できないし、採用もできず、賞与も減るかもしれないと訴え、職員の意識を変えることから病院の再生が始まった。まず、①小児科医師を確保するために、長堀病院長自らが大学病院をはじめ関係各所に働きかけ、翌年から4人派遣してもらえるようにした。②「救急車を断ったら、翌朝その理由を院長に説明しに来るように」と伝え、救急車全応需の方針を徹底した。③外科に紹介してくれる開業医約70軒を病院長自ら訪問することで、患者を紹介してもらえるように取り組んだ。
 こうした取り組みによって、手術件数が増加するにつれ、専門医認定病院の同院に意欲的な若手が集まるようになり、救急も活性化してきた。経営も上向いたことで、最新鋭CTやMRI、ダ・ヴィンチ(手術支援用ロボット)などの最新機器を導入できるようになった。2016年には入院患者のためのICUや精神科病棟10床の新設を行い、総合入院体制加算1を取得するに至った。
 現在は外科手術だけで年間1,500件超、全体で年間7,500件の手術を行うようになり、全国30位以内の状態である。三浦半島における急性期患者シェアは54%で、13期連続黒字を実現している。

【地域連結型医療体制の構築を推進】

 全病床を全診療科対応の病床一元管理とすることで、冬場の平日の病床稼働率(ICU系を除く)は100%を超えている。また、地域完結型医療を目指して「横須賀共済病院に文句を言う会」から始めた医療連携会議の定期開催や地域連携パス等のITネットワークの構築により、周辺の10協約病院、15連携医療施設、578人の登録医を確保しており、三浦半島内に立地する医療機関(医科限定)のうち、同院と連携登録している施設の割合は75%を超えている。三浦半島約3,000床の70%に相当する2,091床が連携し、同院からスムーズに転院させることで、平均在院日数9日台を維持している。週2回の頻度で患者の満足度向上に向けた改善活動を行っており、入院患者の満足度は96%に達している。
 中期戦略課題を解決すると次年度の項目から削除され、病院全体のモニタリング指標と連動するようになっており、電子カルテ連動の独自のアプリにより、瞬時にモニタリング指標として作成・分析できるようになっている。
 また、内閣府の「AIホスピタルによる高度診断・治療システム」に5病院(他は国立病院、大学病院、がん研)の一つとして参画し、AI技術を活用した音声による診療記録の自動入力化を通じたさらなる生産性向上を目指している。

【病院理念への職員の共感と組織活性化】

 かつて看護師の離職率が14%と高く、5年目で辞める人が多かった。そこで、4~5年目の看護師をディズニー・アカデミーのホスピタリティ研修へ毎年50人程度派遣したり、看護部長・看護師長をはじめ、管理職層へのシステミック・コーチングの導入などを行うことで、職員の意欲が高まり、離職率は8.7%に下がり、応募倍率は1.5~2倍になった。また、希望する職員に対しては、国際医療福祉大学の社会人大学院のh-MBAコース(2年間)の就学支援も行っている。
 今では、病院理念「よかった。この病院で」に職員が共感し、それに必要となる先端医療・がん治療・救急医療の3つの中心医療を供給する体制が整備され、常に改善する仕組みができている。職員が企画する「おしゃべりカフェ」や病院まつりを通じて、部門や職種の垣根を越えた組織の活性化につながっている。
 また、ダイヤモンド・プリンセス号の新型コロナ感染者の対応としてD-MAT隊の派遣を行った他、新型コロナ感染者を受け入れた当初は、医療従事者に対する偏見もあったが、早くから積極的な情報発信に取り組むことで、多くの施設・企業から支援や励ましの声が届くなど地域の共感を得て、地域と一体となった医療サービスを提供している。

沿革・事業内容
業種 医療
設立 1906年
代表者 長堀 薫
所在地 神奈川県横須賀市
売上高 271.6億円、経常利益8.4億円(2019年度)
従業員 1,606名

 理念は、「よかった。この病院で」。
 患者さんが診療を受け、職員は働いて、そして市民にはこの病院がここにあってよかったと思われる病院を目指しています。
ビジョンは二つ、高度急性期病院であることと、マグネットホスピタルになることです。
 50万人の人口を擁する三浦半島を中心として、先端医療、がん治療、救急医療をはじめとする診療密度の高い医療を提供しており、診療ボリュームは全国30位となっています。
 救急全応需が可能となっているのは、全病床が全診療科対応となっている病床管理体制です。回復期、慢性期主体の10病院とアライアンスを組み、地域完結型医療を実現し、市民に安心を提供しています。

経営品質向上活動への取り組み

 経営危機に陥った2013年から、経営戦略を組み立てつつ走りながら組織を改革しました。診療の質と経営の質の高い次元での両立を目指し、高度急性期にリソースを特化し慢性期機能は聖域なしに削減しました。その結果、高い診療単価と新入院患者数の増加が実現し、財務体質が強化されています。
 過重労働の軽減とインフォームドコンセントの改善を目的にAIテクノロジーの導入を図っています。2018年より、内閣府の戦略的イノベーション創造プログラム(SIP)の「AI(人工知能)ホスピタルによる高度診断・治療システム」事業の公募に採択され、病院のIT化・AI化を推進しています。
 COVID-19対応では、スタッフの高いモチベーションのもと、診療では「神奈川モデル」、PCR検査では「横須賀モデル」の中核として機能し、通常診療と両立させており、ウイズコロナ時代でも変わらず魅力ある病院であるよう努めています。

お問い合わせ

所在地 〒238-8558 神奈川県横須賀市米が浜通り1-16 国家公務員共済組合連合会  横須賀共済病院
連絡先

TEL:046-822-2710

EMAIL:y-chiba@ykh.gr.jp

担当 ブランド推進室 千葉 由美