本年度受賞企業

2010年度日本経営品質賞中小規模部門受賞

東京都小金井市 衛生用品レンタル業

株式会社武蔵野

https://www.musashino.co.jp/

代表者:代表取締役 社長  小山 昇 氏

  • 従業員自身の成長によって現場主義型の経営体制が確立している
  • 変革の歩みの中で守ることと変えることを明確化して戦略と日常行動に落とし込んでいる
  • ❝徹底すること❞と徹底できる仕組みが組織文化として定着している
  • 人材の力を活かし切る採用・育成・登用のシステムが活力にあふれる組織をつくっている
表彰理由

 株式会社武蔵野は、2000年受賞時の「社長のトップダウン経営」から、10年を経て顧客の声を現場の価値創造に結び付けるために、過去の経験則よりも現場の事実を重視した「社員主体の自律的経営体制」に変革した。2000年受賞時の在籍社員が半数以下のなか、競争が激化する衛生用品レンタル業界において、同社ダスキン事業は堅実に成長するとともに、ダスキン事業での経験をもとにした経営サポート事業を、新たな経営の事業基盤として確立させた。永年にわたり、守ることと変えることを明確にした戦略、人材の採用・育成・登用が従業員中心の組織力を強化してきたことで、2つの事業における高い顧客満足度と社員満足度、そして極めて健全な財務状態の達成に結びついている。2000年受賞以降の継続的な変革は、経営品質の基本理念の具現化、組織開発や事業承継等、多くの中小規模企業に参考となるヒントを与えてくれる。 以下が今回の審査で高く評価した点である。

従業員自身の成長によって現場主義型の経営体制が確立している

 トップダウンの指示通りに行動するだけでは現実に対応できないことに従業員自らが気づき、2004年頃から中間管理職層や現場従業員自らが、経営層に対して顧客の声の代弁者として主体的に意見を言えるシステムをつくり始め、現在、現場中心の自律的なマネジメント体系を完成させている。2000年の日本経営品質賞受賞以降10年間をかけて実現してきた「トップダウンからボトムアップの経営」は、単に意思決定プロセスの流れを上方向から下方向に変えるという仕組みの変更にとどまらず、経営品質向上プログラムが目指している、従業員の意識と思考、組織の対話の変革による現場主導型の経営体制が確立していると評価できる。

変革の歩みの中で守ることと変えることを明確化して戦略と日常行動に落とし込んでいる

 独自の「経営計画書」等を中核とする組織価値観、「早朝勉強会」と「環境整備」を基本にした社員教育、地域密着の市場戦略等、経営の根幹は守り続ける一方、市場全体では競争が激化するダスキン事業は、市場環境や顧客ニーズの変化に応じた新たな工夫・改善を随所に行うことで堅調な成長を見せている。また、介護保険適用外の高齢者向け介護サービスという社会的意義の大きい事業への進出や、当初小山社長の個人的な経営指南塾に近かった経営サポート事業を、自分たちの組織変革の事例を理論化して顧客の会員化を進め、組織革新の定着プログラムとして体系化し、5年間で5倍の事業規模へと急成長させている。こうした事業・組織構造を大きく転換させながらも、変革の歩みの中で守ることと変えることを明確にし、戦略や具体的な日々の活動に落とし込んでいることが、極めて健全な財務状態の維持につながっていると評価できる。

❝徹底すること❞と徹底できる仕組みが組織文化として定着している

 永年続けている地域貢献活動や、一人ひとりの従業員が自分の判断で顧客への役立ちや気配りを行なっていること、部門会議や組織横断チームでは常に「未来対応型問題解決シート」を思考のフレームワークとしていること等、顧客本位の思考や行動する習慣が定着している。同時に成果の見える化、従業員の積極的な行動をあらゆる面から発見し褒め称える仕組み等により、“徹底すること”が独特の組織文化として定着しており、その結果が、高い顧客満足度、従業員満足度を生んでいる。

人材の力を活かし切る採用・育成・登用のシステムが活力にあふれる組織をつくっている

 採用段階でのインターシップ制度や内々定以降の独自の工夫による入社前研修等のフォローにより、5年以内の定着率は86.8%と、中小企業として極めて高い状態にある。また入社後のOJT制度や専門トレーナーによる育成支援、役職者の社内公募なども盛んに行われている。さらに、ダスキン事業のベテラン社員が経営サポート事業の講師やスタッフにキャリアアップする機会も開かれており、人材が自立的に育つ状況が意図的に作られている。従業員の経営参画の機会、価値原則・行動原理の明確化、活発な社内コミュニケーション活動、何事もオープンにする会社風土、健全な財務に裏付けられた人材育成投資によって、人材と利益が組織内で還流し、自分たち自身で未来を創造できる力強い組織を創り出している。

沿革・事業内容
業種 衛生用品レンタル業
設立 1956年
代表者 小山 昇
所在地 東京都小金井市
売上高 36億1460万円(2010年4月期実績)
従業員 232名(2010年4月末現在)

 ㈱武蔵野は、1956年6月に東京都武蔵野市に薬局として創業者 藤本寅雄が開業しました。1964年に㈱ダスキンの創業者 鈴木清一と出会い、東京の第一号加盟店としてダスキンの事業を開始しました。1989年に現代表の小山昇が社長に就任、経営計画書による経営と環境整備を軸に、バックヤードはデジタル化し、お客様には徹底したアナログ対応による接客で、“小さなテリトリーで大きな占有率を確保する”戦略で事業を伸ばしてきました。現在、東京多摩地区のみで14の営業所でダスキンの事業を展開しております。  2000年度日本経営品質賞を受賞し、2001年に全国の中小企業対象に経営サポート事業部を設立。『経営の動くショールーム』として、武蔵野の現実・現場・現物と仕組みを公開し、2010年11月現在、全国で365社の企業様が会員となり業績向上のお役立ちを行っております。主に提供しているサービスとしては、経営計画書の作成や長期事業計画の作成等を小山が直接指導する【実践経営塾】、幹部社員対象に幹部の意識改革を行う【実践!幹部塾】等のセミナー形式のものから、【環境整備定着プログラム】など直接お客様先で改善のお手伝いする訪問形式の商品も提供しております。会員企業様のお困りごとに合わせたプログラムを50種類用意し、業界問わず幅広いお客様層から支持をいただいております。 また2003年には介護保険外のサービスを提供するダスキンホームインステッド事業を開始、ご高齢者の方々が出来るだけ長い間、自宅で暮らせるよう支援を行い、多摩地区に5拠点を構え、ご高齢者とそのご家族に安心を与える事業を行っております。

経営品質向上活動への取り組み

 1997年に経営品質と出会い、毎年いただく評価レポートを基に経営改善を繰り返しました。幹部社員中心に29名をアセッサーの教育を受けさせ、2000年度に日本経営品質賞を受賞しました。当時の主な受賞理由はトップ小山の強力なリーダーシップによる経営計画書による経営でした。その後の事業の拡大に伴い経営革新をする上で、市場の変化、お客様の声をより正確に、そしてスピーディーに小山に上げられる組織にしていかないと、お客様の要望に応える事が出来ないと気付きました。2004年度に提言いただいた内容に『社員一人一人にお客様の重要性を考えさせる環境が必要』との提言を受け、小山自らが変化し、今まで一人で作成していた経営計画書も幹部を参画させて作成するなど、社員に考えさせる環境を用意しました。現場で起きている事実、お客様のニーズの変化をトップに上げる仕組みを確立し、経営判断に必要な情報を下から上げる仕組みを確立し、トップダウンの経営からボトムアップの経営にシフトチェンジする事により、お客様に対して更なる満足度の向上、不満足要因の解消に努める事に繋がりました。 経営品質と出会って13年、続けてきた事が今の武蔵野にとって大きな財産となっております。日本経営品質賞の歴史の中で、初めての2度目の受賞企業となりましたが、慢心することなく更なる経営改善を行い、一層の努力をして参ります。