本年度受賞企業

2023年度日本経営品質賞 本賞大企業部門受賞

埼玉県さいたま市 ビルメンテナンス業

新日本ビルサービス株式会社

https://www.snb.co.jp/

代表者:代表取締役社長 関根 一成 氏

  • 【「清掃革新」による清掃業務の生産性向上】
  • 【業容拡大の背景にある「顧客の要望を断らない」文化】
  • 【社員の挑戦や活躍を支える人材活用の風土】
表彰理由

同社の表彰理由は以下の通り。
 
 ビルメンテナンス業界は、元請け会社の多くが大手企業系列であり、小規模の下請け会社が無数に連なる重層的下請け構造になっている。その中で同社は、家業のクリーニング業から関連する清掃事業で独立起業し、下請けに入らず(ビルオーナーとの直接契約)、できる限り下請けを使わず(自社による直営施工)、しかも官公庁の競争入札には参加しないという方針を掲げており、きわめて異色な存在である。
 人手不足や低収益性といった構造的課題を抱える業界において、同社の付加価値労働生産性は業界平均の1.3倍、営業利益率は1.6倍、売上成長率は6倍強に達しており、業界の構造的課題に正面から取り組んできた成果といえる。

【「清掃革新」による清掃業務の生産性向上】

 成功の大きな要因として、同社が「清掃革新」と位置づける清掃業務の生産性向上の取り組みが挙げられる。その代表的なものが、従来のワックス管理による「汚れの清掃」からコーティング施工による「汚れの防止」への転換だ。メーカーとの共同研究を通じて、汚れがつきにくく、耐久性向上や長期間の美化維持を実現するコーティング技術を開発。コーティング施工を導入した施設では日常清掃の時間短縮や定期清掃の回数削減によって顧客のトータル・コストを抑えることが可能となり、同社においても作業負荷軽減や単価アップにつながっている。
 2020年からはAI清掃ロボットの導入を開始し、現在約100台以上のロボットが稼働している。ロボットが強みとする早朝、深夜、日中、24時間いつでも最適な時間帯で遠隔監視による床面清掃を行い、人は人にしかできない清掃領域を担うことにより、人とロボットの役割分担の効率化が進み、人手不足の課題解決につながっている。複数ロボット稼働時の制御技術などの独自ノウハウをもとに最適な運用を可能にしたことで、顧客のコスト削減にも寄与している。
 現場起点での創意工夫が実に多いことも、同社の特徴といえる。それは、直接契約・直営施工を通じて、顧客の課題を自分事と捉えて解決に取り組む姿勢の表れでもある。現場での日々の改善をはじめ、ホテルのロビーなどで使用される大理石の研磨技術や、厨房にあるグリストラップ(油の除外装置)の石鹸化工法(鹸化剤を使用して廃油を石鹸化するもの)などの技術導入も、社員の発案によって生まれている。

【業容拡大の背景にある「顧客の要望を断らない」文化】

 同社は現場の最前線で働く「さわやか社員」(パート社員)の誠実な仕事ぶりが高く評価され、顧客の要望に応える形で、設備管理、修繕・工事、ビルオーナーの運営代行、警備など、いわゆる「きれいにする」「場を整える」ことを基軸とした施設全般の管理・運営へと業容を拡大してきた。ビルオーナーの運営代行、いわゆるプロパティマネジメントも、「さわやか社員」を高く評価していた主要顧客の推薦で参加したコンペで選定されたことに始まり、現在の受託商業施設は12カ所に達している。
 このように業容を拡大してきた背景には、「顧客の要望を断らない」という同社の文化(行動規範)がある。その端的な例が、一見すると畑違いにみえる非営利の地域振興活動「彩の国マルシェ」であり、同社は運営母体であるNPOに参画し、企画支援を担っている。その出発点となったのは、プロパティマネジメントの受託施設で支配人を務める社員が、集客向上を目的にイベントを企画し、協力者を巻き込みながら成功させたことだった。現在では大手企業や行政からの要望を受けて埼玉県各地で定期的(3週間に1回)に開催されている。
 病院清掃は、病院経営者からの要望を受けて感染対策などの技術を学びながら開始した。コロナ禍では、感染対策として導入した酸化チタン光触媒抗菌剤による抗菌処理が高く評価されるとともに、感染が発生した施設から依頼があった消毒作業を全て引き受けて迅速に対応したことで顧客との信頼関係がさらに高まった。
現在は、長年培ってきたビルメンテナンスの知見をもとに、施設の企画・設計段階から参画する「事業デザイン」にも着手している。デベロッパーとの協働によるプロジェクトで、商業施設や住宅、公園、福祉施設などを組み合わせた街づくりのデザインから完成後のビルメンテナンスまでの一貫した価値提供を目指している。

【社員の挑戦や活躍を支える人材活用の風土】

 同社は、自社にはない知見・ノウハウをもつ外部人材の受け入れを積極的に行っている。そして、中途採用のキーパーソン社員の下には若手社員を配置し、チームでプロジェクトを行うことで組織能力を高めている。
 最先端の清掃技術の導入は、大手管理会社からの中途採用社員の発案によるものだ。当初は技術的に未知数と判断されて見送られたものの、社員の熱意が会社を動かし、技術習得のための米国視察が実現した。帰国後は、同社とつながりの深い顧客施設の協力を得て実証試験を繰り返し技術習得に至った。
 「事業デザイン」においても、大手小売チェーンで店舗開発に携わっていた中途採用社員が、「これまでの経験・ノウハウを活かして、前職ではできなかったことも実現できる」ことが高いモチベーションにつながり、事業推進の重要な役割を担っている。
 若手社員も年齢や経験に関わらず活躍できる環境がある。現行の人事制度は入社4年目(当時)の女性社員からの提案をきっかけに改定したものだ。ES調査の結果に問題意識を持ち、人事制度の改定を会社に提言。一度は却下されたものの、社長への直談判などを経て全社プロジェクトが組まれ、彼女はプロジェクトの中心メンバーとして活躍した。「彩の国マルシェ」の地域貢献性は、地域創生や街づくりを専門分野とする大学生や大学院生の関心を集めるきっかけとなり、優秀な人材が入社するケースも増えている。
 現場で活躍する約1,400名の「さわやか社員」には、正社員と同様に会社の理念を共有して継続的な教育を行っている。意欲があればいつまでも働くことができるように定年を廃止し、現在は18歳から最高齢88歳までの幅広い年齢層が在籍している。将来を見据えて積極的に採用している外国出身・外国籍の「SAWAYAKA社員」にも同様の教育が行われている上、コロナ禍でも労働時間を確保して生活を保障した同社に多くの感謝の声が寄せられるなど、強い信頼関係が築かれつつある。

沿革・事業内容
業種 ビルメンテナンス業
設立 1993年
代表者 関根 一成
所在地 埼玉県さいたま市
売上高 売上高3,950百万円(2022年度)
従業員 936名 *パート・アルバイト等は8時間換算で算出

 新日本ビルサービスは、「ファシリティに集う人々が愛と笑顔に包まれた躍動する世界の実現」をビジョンに掲げ事業を展開しています。当社は、清掃や設備管理などのビルメンテナンス業を中心に建物を経営の視点から総合的に管理するファシリティマネジメント、テナント誘致やビル運営全般を通じて建物の価値を高めるプロパティマネジメントを提供しています。当社の特長は、現場で働くさわやか社員による誠実なサービス、社員による清掃・設備の直営施工でのサービス提供、顧客の緊急時に社員が駆けつけるなど顧客期待を超えた対応が挙げられ、それらを通して顧客から高い評価をいただいています。
 また、地域振興につながる「彩の国マルシェ」を開催して鉄道事業者、デベロッパー、行政と共に地域活性化に取り組んでいます。新規事業として、顧客の事業の成功を目的に立地に適した建物、用途、テナント構成、事業収支を総合的に分析提案する事業デザインにも取り組み始めました。

経営品質向上活動への取り組み

 埼玉県経営品質賞の知事賞を受賞された企業を訪問し経営品質の取り組みの素晴らしさに感動して、当社でも取り組みをスタートすることに決めました。
 経営品質を学ぶ過程で、当社ではいろいろな面で仕組みづくりが遅れていることを再認識できました。現場では全体的に高いレベルで仕事ができていると思っていましたが、さわやか社員の一人ひとりを見た場合、サービス品質にバラツキが生じていることが大きな課題でした。そこで、社内褒賞制度における審査項目を見直したり、作業のポイントをコンパクトな動画マニュアルにまとめたり、社内認定資格を設定したりといった仕組みづくりを行いました。
 また、埼玉県経営品質賞の知事賞を受賞した際のフィードバックで中長期的なビジョンが必要ではないかという提言を受けて、1年以上掛けて新しいビジョンを策定しました。社員にビジョンを共感してもらうために「ビジョンムービー」を製作し、ビジョン発表と同時に公開しました。ビジョンの浸透を深めるため、経営計画書へ反映するなど繰り返し取り組んでいます。
 これからも経営品質向上に向けて継続的に取り組み、地域社会に無くてはならない愛される会社を目指して社員とともに成長していきます。

お問い合わせ

所在地 〒337-0051 埼玉県さいたま市見沼区東大宮4-22-11 新日本ビルサービス株式会社
連絡先

TEL:048-667-3900

EMAIL:k.furukawa@snb.co.jp

担当 サポート本部 古川 幸治