本年度受賞企業

2009年度日本経営品質賞中小規模部門受賞

三重県多気郡多気町五桂 製薬業

万協製薬株式会社

http://www.bankyo.com/

代表者:代表取締役社長 松浦 信男 氏

  • 業界に先駆けるビジネスモデルの追求による新たな顧客価値の連続的創造
  • 受注拡大による飛躍的な発展を支えた開発・生産現場でのプロセス革新
  • 人材が自律的に育つ環境と職場間の連携による組織の健全で継続的な成長
  • 優しさと気づきあうことを大切にし、常に明朗快活な組織風土の形成
表彰理由

 万協製薬株式会社は、神戸市にて1960年創業、1995年の阪神淡路大震災に被災後、1996年に三重県で松浦社長を含む3名で再創業。医薬品製造業界では先駆的な外用薬の受託製造をビジネスモデルと定め、「工場そのものが商品である」として、積極的な設備投資による顧客基準での生産能力強化と製造工程の近代化を進めた。あわせて、従業員の自律性と気づきを促す組織風土により、現場従業員が直接顧客と対話し協働で、製品の企画・開発・製造を行うプロセスを確立。厳しい経営環境の中顧客層を広げ、高い顧客満足と社員満足、健全な財務状態を達成している。これまでの継続的革新の軌跡は、経営品質の考え方を実践した第二創業のモデル的要素であり、中小規模製造業の経営革新や組織開発に対する多くのヒントを与えてくれる。

業界に先駆けるビジネスモデルの追求による新たな顧客価値の連続的創造

 1996年三重県多気町での再創業時に、当時の医薬品業界では先駆的と言える外用医薬品の受託製造サービスを開始して以降、業界再編や薬事法改正などの外部環境の変化を先取りして、相手先製造プロセスの一部受託から、製品開発から出荷までの完全受託製造、自社で企画・開発した商品のOEM供給事業、製薬メーカー品質で作る高級化粧品の受託製造と、提供サービスの範囲と顧客分野を広げ、連続的に顧客価値の創造に成功してきた。
 また、これらの取り組みは、医薬品業界の中で当社の一定のポジションと認知度を高める成果に繋がっている。新たな事業創造に積極果敢に挑む一方、強みであるスキンケア分野にこだわること、自社ブランド製品の製造販売を続けていることから、顧客からの信頼を何よりも大切にする経営方針と一貫性が保たれた事業展開として深く考え抜かれた構想が読み取れる。

受注拡大による飛躍的な発展を支えた開発・生産現場でのプロセス革新

 現在の売上高は再創業当時の約40倍、製品の年間総製造量1200万個の規模に成長。この顧客層の拡大と一顧客当たりの受託品目の増加による飛躍的な成長の背景には、幹部3人で再開した工場に始まる、絶え間ない生産革新の軌跡がある。受託製造サービスでは「工場そのものが商品」であると位置づけ、先見的な工場の拡大と極めて積極的な開発・製造設備と人材への継続的な投資によって生産能力の強化を図ってきた。さらに、ものづくりの価値基準と定めた「迅速・確実・安価・快適」を具現化するため、独自の顧客対応・提案プロセスや製造工程の清流化、生産管理システムの精度向上など、開発・製造現場では常態的なプロセス革新が行われている。

人材が自律的に育つ環境と職場間の連携による組織の健全で継続的な成長

 現場でのプロセス革新を進めるために、開発・製造・品質保証の主要基幹部門と生産管理や総務の支援部門の緊密な部門連携が行われている。また、部門や職場の連携により高い生産性を実現する源泉には、独自のリーダー制や多能工化システム、従業員の自主自発性を促す対話と意見発表等、様々な機会を通じて職場と人材を活性化する効果的な取り組みがある。こうした職場環境により従業員一人ひとりが自分の成長目標を持ち、会社と職場の支援を受け、成長を実感しながら仕事への誇りと働きがいを持つとともに、他者への貢献・協働の気持ちを育んでいる。

優しさと気づきあうことを大切にし、常に明朗快活な組織風土の形成

 自律的に人材が育つ組織の原理・規範として、優しさによる相互扶助の精神性が根づいていること、常に明るく活発な組織風土が形成されていることが挙げられる。再創業まもない頃、零細規模であった職場で経営者と経営幹部が理想の組織像とした互いに気づきあい助け合う風土が原型となり、組織の規模が拡大しても「万協らしさ」と言える良質な文化・風土が維持・向上されてきた成果と言える。また2004年から毎年三重県経営品質賞に申請を続けることを通じて、自社の強みを再確認し、課題への対応について幹部・リーダー層が対話を繰り返してきたことで、継続的な経営革新が行われている。

沿革・事業内容
業種 製薬業
設立 1960年
代表者 松浦 信男
所在地 三重県多気郡多気町五桂 1169-142
売上高 15億7,555万円(2009年3月期実績)
従業員 100名(2009年11月末現在)

 万協製薬(株)は、1960年3月に外用薬の製造会社として兵庫県神戸市にて設立されました。2009年で49年の歴史を持つ、スキンケア商品専門の企画・開発・製造メーカーです。万協製薬株式会社の社名の由来は「万人が協力して、良い製品作りを行う。」という創業時のスローガンからです。1995年1月17日の阪神淡路大震災によって神戸市長田区にあった本社・工場が全壊し、翌年1996年11月に三重県多気郡多気町に本社工場を移転し、以来、外用剤の設備導入並びに工場増築を続け、現在に至ります。弊社の本社・工場が立地する三重県多気郡多気町は人口約1万5千人の小さな町です。直接、地域で製品を販売するのではないため、当初は全く知名度も認識もありませんでした。しかし近年売り上げの急激な増大に伴い、有名になってきています。そのため地域からも地域貢献、求人雇用などさまざまな要望が寄せられることになりました。弊社の製品・サービスにおける決定的に重要な要件は「コンサルティング製造業」です。弊社の主事業は医薬品・医薬部外品・化粧品のスキンケア製品のアウトソーシング製造サービスです。他社の医薬品製品を製造することを生業とする企業は数多くありますが、スキンケア製品専門しかも数多くのジャンルのカテゴリーの受託企業は日本で10社ほどしかありません。その意味では、弊社はニッチな市場を選択しているといえます。この事業の達成のためには、顧客のニーズを市場調査や面談によってコンサルティングすることにより、単なる下請けではなく、積極的な開発提案を行い、相手先企業が本当に必要とするサービスや製品を迅速・確実・安価・快適に提供することが重要と考えています。受賞の要因の「他社製品の受託製造」に関しては、医薬品は1999年から、医薬部外品は2000年より工程区分業の許可を取得し、スキンケア商品に的を絞って、積極的に行っています。(実績取引会社67社、受託医薬品86品目、自社承認医薬品425品目、医薬部外品4品目、化粧品23品目、雑貨2品目すべて外用剤)工場の建設当初よりスキンケア商品の製造のみを目的としたライン造りにつとめてきたため、スキンケア商品のあらゆる形態の受託が可能となっています。2004年6月に敷地面積3,000坪の第二工場が完成し、2007年12月には隣接地に敷地面積1,000坪の第三工場を取得し、事業拡大を図っています。

経営品質向上活動への取り組み

 経営品質向上プログラムを導入した目的は「会社組織力」の向上につきます。弊社は1995年の阪神淡路大震災によって本社・工場が全壊しました。その後、三重県にて第二の創業を行って今年で14年になります。当時3名だった社員も現在では100名になり、売り上げも14年前の約43倍の規模となりました。その中で、社長である松浦信男は次第に、将来にわたっての自社のありかたに不安を持つようになりました。そんなとき、経営品質向上プログラムに出会いました。地元での大久保寛司氏の講演を聴き、著書を読み電撃に打たれたような感動を覚えました。また、同時期に三重県経営品質協議会に参加させていただき、さまざまな企業の実例を学んでいるうちに、このプログラムが弊社にとって最重要なものであると認識するようになりました。2004年度に初めて活動の成果をセルフアセスメントとしてまとめ、三重県経営品質賞に応募しました。現地調査、フィードバックミーティングを通じて、より経営品質向上プログラムへの理解が深まりました。弊社がもっとも大切にしているのは、エンパワーメント(情報公開による権限委譲)です。経営幹部、社員が一丸となって、会社の目指すべき価値や目的を共有し、成長を続ける企業となるのが導入の目的でした。三重県での経営品質賞の実績としては、2005年度奨励賞、2007年度優秀賞、2008年度知事賞を受賞しました。この取り組みを継続するために2009年に日本経営品質賞に応募しました。また、2009年には弊社開発製造化粧品がモンドセレクション最高金賞に選ばれました。弊社では、キャリアアッププランを社員それぞれに設定し、個別指導を行っています。さらに、3名単位のグループ制をとりそれぞれのグループにリーダーを任命して、社員みずからリーダーシップを発揮でき、会社もエンパワーメントしやすいプロセスを行っています。これからは日本経営品質賞の受賞をきっかけとして、ますます経営品質向上活動を地域に広げていきたいと考えています。