本年度受賞企業

2020年度日本経営品質賞大企業部門受賞

新潟県上越市 金属加工

日鉄工材株式会社

http://www.nsz.co.jp/

代表者:代表取締役社長 宮原 光雄 氏

  • 【顧客の成長戦略と自社の取り組みを親和させる「顧客成長戦略親和」】
  • 【画期的な製品を生み出す「ベストマッチ製品開発と高生産性一貫管理」】
  • 【組織風土の変革による社員と組織の良好な関係性】
表彰理由

<特徴・成果>
●電気自動車やスマートフォン等の最先端機器に使用される電解銅箔の製造設備であるチタン製電着ドラムのトップメーカー。国内シェア100%(年間販売本数)、世界シェア約70%(累計販売本数、同社推定)。日本製鉄株式会社の子会社(同社発行済株式総数の72%を所有)。
●リーマン・ショック等の影響により2009年に赤字転落後、主要事業の一つから撤退するなど、経営危機に陥っていた2012年に石川前社長が就任。リストラを実施せず自力での経営再建に着手。
●顧客ニーズを起点に、顧客の成長戦略に貢献する付加価値の高い製品を継続的に開発し続けており、2018年には世界最高性能の次世代ドラム「APLEX®」を開発し、電解銅箔の高品質化に貢献している。
●チームによる改善活動やIoT活用による業務効率化を推進。社員アンケートの「働きやすさ・チームワーク」の満足度は100%を達成。
●高付加価値製品開発や業務改善活動等により、付加価値労働生産性は約1,860万円(2019年度)に達し、2013年度(約650万円)の約3倍に伸長(※製造業平均は約860万円(財務省法人企業統計))。
 同社の歴史は1928年設立の建築資材販売会社「工材社」に始まり、1941年に鉄道車両用のステンレス製化粧パイプを日本で初めて生産開始。太平洋戦争の戦禍を避け、素材供給地である新潟県の直江津に工場を移転した。1961年に電解銅箔用ステンレス製電着ドラム、1972年に電解銅箔用チタン製電着ドラムの製造を世界で初めて行った。現在は、日本製鉄株式会社の子会社として、高度な加工技術によって高付加価値製品を開発し続けている。
 リーマン・ショック等による影響で業績が悪化し、主要事業の一つだった化粧パイプ事業から撤退するなど、2012年度・2013年度と2期連続で経常赤字となった。2012年10月に石川昌弘社長が就任、社員のリストラに頼らず経営再建する決意を固め、同社の改革がスタートした。

【顧客の成長戦略と自社の取り組みを親和させる「顧客成長戦略親和」】

 売上の約70%を占める電着ドラムは、銅箔メーカーが電解銅箔を製造するための重要設備部材で、銅箔の品質を決める鍵となる。電解銅箔は、スマートフォン等の回路基盤用途や、電気自動車のリチウムイオン電池の負極集電体として需要が急拡大している。電着ドラムに対する要求仕様は顧客毎・生産ライン毎に異なり、たとえば、日本の銅箔メーカーは、電解銅箔製品のさらなる薄膜化のための電着ドラムの品質革新を望む一方、中級品の量産を目指す台湾・韓国・中国メーカーは大電流に耐える低価格の電着ドラムを望んでいる。そこで、それぞれの顧客の規格・仕様に対応した電着ドラムを設計・製造できる体制を整えることにした。その上で、国内外の電解銅箔メーカー上位25社について、「顧客実力評価(現状生産量、生産能力増加計画、高級箔製造技術、開発力)」×「自社との信頼関係(納入シェア、当社製品評価)」の2軸で4分類にランク付けし、ランクに応じた価格方針・技術開発とサポートを行っている。
 また、「境界連結者」と名付けた、自社と顧客をつなぐ役割を担う営業・技術開発・サービスエンジニア等19名を配置し、トップ交流、顧客アンケートやヒアリング、技術交流会・巡回および製品完成立会検査などの機会を通じて、顧客の顕在ニーズや問題把握に限らず、将来に向けた方針や主要課題の理解に努め、重要顧客の成長戦略と自社の取り組みを親和させている。これが「顧客成長戦略親和」である。

【画期的な製品を生み出す「ベストマッチ製品開発と高生産性一貫管理」】

 社内外の協働や擦り合わせによって製品の最適設計を実現する「ベストマッチ製品開発」では、材料メーカーとの開発協業による金属材料開発や、社内の設計・製造の協働による「設計・加工の擦り合わせ製品の最適設計」、ビジネスパートナーとの新製品共同開発、新規事業探索を行う全社横断プロジェクトチーム「チームZ」による異要素技術融合での新製品開発に取り組んでいる。
 また、「工材自己管理チーム」が高生産性(高品質・低コスト・高効率・高技能)一貫管理の統合型ものづくりに取り組んでいる。
 電着ドラムの重要部材であるチタン製トップスキンのメーカーと四半期毎の「協業会議」で技術情報交換を行うことで世界初の材料開発に取り組んでいる他、同社は高い技術を持つ冶金分野の技術者を擁しており、競合他社に対する品質優位性を確立している。
 こうした取り組みを通じて、2014年度に全部門での黒字化を達成後、継続的な収益拡大を成し遂げており、2018年には世界最高峰のチタン製電着ドラム「APLEX®」の開発に成功した。現在、電着ドラムにおける同社のシェアは、日本では100%(年間販売本数)、世界でも約70%(累計販売本数、同社推定)を占める。

【組織風土の変革による社員と組織の良好な関係性】

 かつては職人気質で部分最適志向の組織風土だったが、前社長が多くの時間と労力をかけて、一体感や連帯感を育み、全体最適志向で行動できる組織風土に変革してきた。2020年6月の宮原光雄社長就任後も、モチベーションと業績が連動することを理解した社員と組織の良好な関係性は持続している。
 毎月各職場で、顧客は誰か(1R)、顧客の声(2R)、顧客を分析・洞察(3R)、新たな行動(4R)でアイデアを出し実行する「4R(ラウンド)かがやき対話」を行うことで、工材自己管理チーム(全社員:14チーム)を育てている。同チームによる高生産性一貫管理視点での「見える化活動」「諸改善活動」「自律的価値創造活動(JK活動)」は「グッドジョブ活動」と総称される。さらに、社員個人の幸せを「幸せ円グラフ」等で見える化し、「ポジティブな意識(自己効力感)」を醸成、「職場改革・業務改革・時短仕組み改革・休暇の質向上」を実践して、幸せ(うれしさ)・自己実現(やりがい)・生きがいを追求する「働き方・生き方改革」に取り組んでいる。2018年には厚生労働省の「働きやすく生産性の高い企業・職場表彰優秀賞(職業安定局長賞)」を受賞した。
 現在、自動車用のリチウムイオン電池需要が急拡大する中、ボトルネックとなっていた研磨能力の増強、特殊作業設備のオフライン化、ドラム半製品・製品置き場の拡張に取り組むとともに、2016~20年にかけて全社で約30%の大幅増員を行うなど、電着ドラムの年間200本生産体制の実現に邁進している(現在は170本生産体制)。

沿革・事業内容
業種 金属加工
設立 1947年
代表者 宮原 光雄
所在地 新潟県上越市
売上高 47.7億円、経常利益9.1億円(2019年度)
従業員 118名

 日鉄工材株式会社はステンレス・チタンをはじめとする各種合金を加工・販売しています。特殊合金・独自製品設計・高精度加工技術をベストマッチさせ、お客様の多様なニーズに合った高品質・高機能製品を開発・製造できることが当社の強みです。日本製鉄グループの総合力も活かして最適な材料を提案するとともに、チタンなど溶接が難しい材料の溶接技術や研磨技術についてはお客様から高い評価をいただいています。
 当社は1941年に日本で初めてステンレスパイプを製造し、1969年に日本初の冷間圧延ステンレスフラットバー、1972年に世界初の電解銅箔製造用チタン製電着ドラムを開発しました。難しい課題に挑戦するパイオニア精神を引き継ぎ、現在も新たな製品の開発を続けています。チタン製電着ドラムは当社が世界トップメーカーで、このドラムで製造される高級銅箔はEV用リチウムイオン電池や5Gなどの最先端電子機器に多用されています。

経営品質向上活動への取り組み

 2012年度に大きな赤字を計上し、様々な経営体質改善策で業績はV字回復しました。しかし社員のやりがいや顧客満足度が高まったわけではありませんでした。それまでの取り組みがトップダウン型収益改善であり、社員の幸せ・顧客と社会への貢献による会社の成長を目指していないことに気づき、経営品質向上に挑戦することにしました。
 私たちは、「メタルテクノで世界をもっと楽しく快適にする」ために、顧客製品高品質・高機能化に貢献するプレミアムテクノカンパニーを目指し、その結果として「高収益・高労働生産性を達成する」ことにしました。
 2015年度に「新潟県経営品質賞とき賞」、2017年度に「知事賞」を受賞しました。この時の評価レポートでご提言いただいた課題に真摯に対応した結果、厚生労働省の「働きやすく生産性の高い企業・職場表彰優秀賞(職業安定局長賞)」と「グッドキャリア企業アワード・大賞(厚生労働大臣賞)」を受賞しました。
 私たちは「人間力を発揮してファンタスティック(実現が困難)な目標に挑戦する」ことを最も重視しています。主要顧客の顕在・潜在ニーズを具現化するために「顧客成長戦略親和」・「ベストマッチ製品開発」と高生産性一貫管理を目指す「グッドジョブ活動」を推進しています。「社員の幸せ見える化」と「グッドワークキャリア支援」を行い、社員がお互いを理解し助け合うことでファンタスティックな目標を達成し、高付加価値の製品を作り、労働生産性を大きく向上させています。今回の受賞を励みとして、SDGs目標の実現に向け、社会に価値のある画期的な製品を創造いたします。

お問い合わせ

所在地 〒942-0065 新潟県上越市川原町10番29号 日鉄工材株式会社
連絡先

TEL:025-543-3401

EMAIL:kawano@nsz.co.jp

担当 総務部総務グループ 川野 朋生