本年度受賞企業

2020年度日本経営品質賞中小企業部門受賞

埼玉県入間郡三芳町 産業廃棄物処理

石坂産業株式会社

https://ishizaka-group.co.jp/

代表者:代表取締役 石坂 典子 氏

  • 【絶体絶命の経営危機をきっかけとした業態転換】
  • 【環境教育を軸とした「見せる」経営によるブランドイメージの向上】
  • 【同業者も顧客に取り込み、業界における独自のポジションを確立】
  • 【インナー・ブランディングによる組織風土の変革】
表彰理由

<特徴・成果>
●1999年のダイオキシン騒動(のちに誤報と判明)を機に主力事業だった建設系産業廃棄物の焼却による縮減事業から再資源化事業へと業態転換を図った。建設混合廃棄物の分別・分級技術をコア技術として研究開発に取り組んだ結果、業界常識を破って同業者も顧客として取り込んでいる(売上に占める同業者割合42%)。現在、建設混合廃棄物の減量化・再資源化率は98%で国内トップクラス。
●従来は埋め立て処分されていた「建設混合廃棄物に含まれる土砂」を盛土材として生産し、業界で初めて建設技術審査証明を取得。主に道路用盛土材や埋設物周辺の埋め戻し材として販売。
●施設に隣接し、ごみの不法投棄で荒れ果てていた雑木林を江戸時代から引き継がれてきた里山として再生・整備し、環境教育の場「三富今昔村」として公開。全天候型再資源化施設とともに国内外から多くの人が訪れる場となっている(年間来場者数4万人以上)。
●相手の気持ちになって応対する社員のおもてなしとシームレスなオペレーションが価格以上の価値を生み、搬入事業者の満足度90%以上を達成。

【絶体絶命の経営危機をきっかけとした業態転換】

 創業者が15億円(当時の売上高25億円)をかけてダイオキシン対策の最新型焼却炉を導入し、更なる飛躍を目指していた1999年、地元農作物から高濃度のダイオキシンが検出されたというテレビ報道(のちに誤報と判明)をきっかけに、「石坂産業は出ていけ!」という地域でのバッシングが始まり、焼却による廃棄物の縮減事業(当時の売上高の70%)からの撤退を余儀なくされた。このことで、①法令を遵守し、地域に迷惑をかけない最新設備を導入しても、地域住民に伝わらなければ意味がない、②業界のイメージを変えなければ地域の理解は得られない、という教訓を得た。
 2000年は環境元年ともいわれ、国の方針も後押しとなり、建設系産業廃棄物の焼却による「縮減」事業から「再資源化」事業に業態転換を図る。創業者の長女の石坂典子社長が代表権のない社長に就任し、教訓②(上記)から、地域環境や労働環境に配慮した製造業の工場のような施設を目指し、20億円を投資して、全天候型再資源化施設を建設。新たな再資源化事業として、土砂系混合廃棄物(土砂系)と建設発生土(発生土)が混ざった建設副産物を再資源化する乾式の独自の分別・分級技術の技術開発に専念し、独自開発による処理プラントを完成させた。

【環境教育を軸とした「見せる」経営によるブランドイメージの向上】

 石坂典子社長が2012年に代表権を持ち、第二の創業が始まる。教訓①(上記)から「見せる経営」として環境教育に着目し、一般市民に先進的な再資源化施設とあわせて、ごみの不法投棄で荒廃していた雑木林を里山として再生・整備し、美しい武蔵野の雑木林を見せる「三富今昔村」事業を展開している。2012年に「くぬぎの森環境塾」を開校し、2013年に再資源化施設と里山が埼玉県から「体験の機会の場」として認定を受け、今では国内外から年間4万人が訪れるようになっている。来場者による評判が口コミで広がるにつれてマスメディアへの露出も増え、同社の環境配慮への先進的な考え方や取り組みに共感した地域住民や大手住宅メーカーが同社を取引指定するケースも多くなっており、独自の価値連鎖につなげている。

【同業者も顧客に取り込み、業界における独自のポジションを確立】

 高度な分別・分級技術により、建設混合廃棄物の減量化・再資源化率は現在98%に達している。また、プラント稼働率100%を目指し、内製化しているメンテナンス技術の向上のためのOJT教育をはじめ、処理技術向上のための新技術開発等、先進的な工場に日々進化している。
 長年培ってきた技術を同業者にも開放し、同業者が選別処理した後の残渣物を同社に搬入してもらうスキームを構築することで、同業者も顧客として取り込んでおり、業界でも独自のポジションを確立している。また、搬入ドライバー視点によるオペレーション改善や、ストレス緩和につながるおもてなし等により、価格以上の魅力的価値を提供している。
10年以上の研究の末、土砂系混合廃棄物から取り出した精選土を原料に、関連会社で固化・造粒して粘質土の盛土材としたものが、2015年に業界で初めて建設技術審査証明を取得し、「NS-10」として商品化(主な用途として道路等の盛土材や埋設管周辺の埋め戻し材)されている。

【インナー・ブランディングによる組織風土の変革】

 「見せる経営」により同社のブランドイメージが高まった一方で、社員の意識や理解とのギャップが生じていたため、組織風土の変革や社員の人間力向上のためのインナー・ブランディングを推進している。同社ではかねてより、人間の五感を研ぎ澄ませて全てのことに配慮する「五感経営」を標榜していたが、中間マネジメント層の意識改革やマネジメント力向上、社内横断によるプロジェクトの推進等を通じて組織変革を進めており、チャレンジ精神や互いに認め合い、フォローし合う組織文化が醸成されてきた。現在、社員一人ひとりが「石坂ブランド」を体現し、社外に対しても個性を発揮できるプロフェッショナルとなることを目指して人材開発を進めるとともに社内講師養成にも取り組んでいる。
 同社は業界でいち早く国際規格ISO(※)の認証を取得し、7種統合マネジメント・システムを構築して単年度でのPDCAサイクルを回してきたが、中期目標に向けた経営品質向上を図るため、経営品質アセスメント基準の要素も取り入れ、より継続的かつ全社的な取り組みを進めている。
(※)ISO14001(環境)、ISO9001(品質)、OHSAS18001(労働安全衛生)、ISO5001(エネルギー)、ISO27001(情報セキュリティ)、ISO22301(事業継続)、ISO29990(学習サービス)

沿革・事業内容
業種 産業廃棄物処理
設立 1971年
代表者 石坂 典子
所在地 埼玉県入間郡三芳町
売上高 61億円、経常利益10億円(2019年度)
従業員 168名

石坂産業株式会社は、「自然と美しく生きる」をコーポレート・スローガンに掲げ、持続可能な社会の実現のため「地球環境負荷低減」「地域自然環境・文化等の社会資本の保全」 「体験型環境教育を通じた未来の人財づくり」を目標として事業を展開しています。
 当社の事業は、主に建設廃棄物の再資源化事業と施設周辺の荒廃した雑木林を保全再生し、その里山を活用した「体験型」環境教育事業を展開しています。建設工事で発生する建設混合廃棄物や建設混じり土を独自に研究開発した分別・分級技術により資源を再生しています。この再資源化施設や保全再生した里山を、環境教育等促進法に基づく「体験の機会の場」として認定取得し、フェアトレード・エシカルや地球環境の問題について気づきを促し考える、「体験型」環境教育プログラムを提供しています。当社施設は業種や国内外を問わず多くの方にご利用いただいています。当社理念や価値を支持共感してもらうクラスターの創出と社内外のつながりの強化から、共通価値の連鎖と行動変容につなげています。
 「卓越した経営」の更なる飛躍のため、今後予測される社会の変化に対応する新事業を展開し、建設業界や地域を巻き込んだ改革を進めてまいります。

経営品質向上活動への取り組み

 当社では2014年より国際規格7種統合マネジメント・システムを構築し、独自の経営システムを運用しています。統合マネジメント・システムとは、7つの国際規格の視点で組織変革を促す改善活動になります。毎年、各部署が自律的に改善目標を設定し活動します。個々の部署活動が組織内の連鎖・化学反応を引き起こし、組織全体がスパイラルUPする経営品質向上の制度設計になっていました。 
 2018年に、日本経営品質賞のセルフアセスメントの要素を取り入れた新経営システムに移行しました。統合マネジメント・システムの改善活動に、日本経営品質賞の戦略的視点を取り入れ、国際規格と日本経営品質賞の基準を融合した、独自の経営マネジメント・システムを再設計したものになります。
 社員一人ひとりが「石坂ブランド」であり、新たな価値を創出する源泉であります。個々の社員が光り輝き内外に対してプラスの影響・変化を与えるプロフェッショナル集団を目指し、更なる変革へ取り組んでまいります。

お問い合わせ

所在地 〒354-0045 埼玉県入間郡三芳町上富緑1589-2 石坂産業株式会社
連絡先

TEL:049-259-5800

EMAIL:y.kumagai@ishizaka-group.co.jp

担当 経営企画室 熊谷