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福岡県北九州市 損害保険代理業、 生命保険募集代理店 トップ保険サービス株式会社https://www.top-hoken.com/ |
富山県富山市 貨物運送、重量物運搬・据付、 保管、機械設計・製造等 丸栄運輸機工株式会社https://www.maruei-u.co.jp/ |
売上高1,381百万円(2023年度) 従業員92名
【ワンストップ複合サービスによる顧客に寄り添ったソリューションの提供】
同社は、運搬、据付、保管、エンジニアリングといった複数の事業をワンストップで提供する独自の事業モデルを展開している。顧客との直接契約を通じて顧客理解を深め、その知見をもとに顧客に寄り添ったソリューションを提供することで、主要顧客である製造業の周辺業務における課題解決に取り組んでいる。これにより、工数削減、工期短縮、コスト削減といった成果を通じて顧客へ貢献している。
物流業界が2024年問題に象徴される人手不足などの構造的課題に直面する中、同社はDX化や「無駄取り」といった業務改善を全社的に推進している。これらの取り組みにより、顧客対応をはじめとする高付加価値業務へのシフトを図り、顧客価値を創造する体制を強化している。独自の価値提供によって顧客基盤の拡大や事業成長を達成しており、同業他社を大きく上回る高収益性(償却前営業利益率で2倍以上)を実現している。
【ありたい姿や顧客価値を社内に浸透させる取り組み】
昨年度審査のフィードバックを踏まえ、数値目標と社員の行動指針が中心だった経営計画を刷新した。同社が「ありたい姿」として掲げている「10年後を目標として、富山県を中心とした製造業になくてはならない存在になる」ために、新たに作成した経営計画には、将来の「ありたい姿」を明確に掲げるとともに、顧客価値を創造するための独自の「価値創造サイクル」を示すなど、将来の方向性やその実現のための具体的な考え方などの非財務情報を盛り込んだ。そして、経営計画発表会を通じてそれらを全社に共有するとともに、社長勉強会や顧客価値経営勉強会といった双方向での対話を通じて組織の方針や目標に対する社員の理解を深め、共感を高めている。こうした取り組みを通じて、ありたい姿の実現にむけた社員の具体的な行動に結びつくようになっている。
【潜在ニーズを顕在化するための活動の進化】
また、昨年度審査を通じて、顧客の潜在ニーズを顕在化する取り組みの強化が重要課題であると強く認識した。そこで、顧客業務を深く理解し、潜在ニーズの把握から具体的な提案につなげる活動を重点的に進めている。まず、顧客セグメンテーションを従来の業種別から生産プロセス別に変更し、勉強会によって組織全体の底上げを図った。次に、営業担当者以外の社員も顧客訪問に同行することで、顧客情報の収集を強化している。さらに、会社見学会の開催や差別化チラシの活用を通じて顧客の関心を引き出しながら、チーム単位で仮説構築と検証に取り組んでいる。
これらの取り組みにより、顧客の潜在ニーズを掘り起こし、それにもとづく効果的な提案が可能になりつつある。現在、半期を終えた時点で昨年度と同程度の提案件数を達成するなど、取り組みの効果が数字にも表れている。
福岡県福岡市 自動車販売等 福岡トヨタ自動車株式会社https://www.fukuoka-toyota.jp/ |
売上高107,730百万円(2023年度) 従業員1,333名(2024年10月末)
【販売志向から顧客志向へのシフト】
創業の原点に立ち返り、地域社会に貢献する「モビリティカンパニー」を目指して、販売志向から顧客志向への転換を進めている。顧客対応を店舗スタッフ全員で行う「チーム制」への転換を柱として、顧客価値を高める活動に全社を挙げて取り組んでいる。
業界全体で新車供給環境が悪化する中、同社では中古車と即納可能な新車を常備する大規模な「総合展示場」を2023年1月に開設。「早く車が欲しい」顧客に、「即納」を価値として提供している。また、自社で下取りした良質な認定中古車を新車同等に仕上げて、専用の納車ブースで引き渡す独自のスタイルも確立した。
トヨタ車の国内販売台数が減少傾向にある厳しい市場環境の中で、同社では顧客志向による顧客価値向上の取り組みを通じて、販売実績は過去最高となる前年度比29%増を達成している。
【チーム制導入による業界慣習の変革】
店舗では、一人の顧客に担当スタッフが一人で対応する従来の営業スタイルから、スタッフ全員で対応するチーム制を導入した。導入に際しては各店舗の意向を尊重し、強制はしなかったが、その効果が表れたことで、現在では多くの店舗がチーム制を採用している。毎週水曜日午前の2時間、店舗を閉めてスタッフ全員が参加する「店舗ミーティング」では、情報共有だけでなく、「よい店舗」をつくるための対話が行われている。評価制度の目的も、従来の「評価」重視から「育成」重視へと変更した。
チーム制への移行により、社員の時間的余裕が生まれ、顧客と接する時間も増えた。加えて、社員の働き方改革や業務効率化にもつながっている。業績面においては、台当たりの利益は2021年度比で1.3倍に向上した。さらに、トヨタ販売店の全国平均と比較しても、営業スタッフ一人当たりの販売実績が1.3倍、店舗あたりの販売実績が1.65倍を達成するなど、その効果が表れている。
【優秀な人材確保を支える独自の人材戦略】
同社は九州エリアにおける就職人気企業として、優秀な人材の確保に成功している。この背景には、地域に根ざした企業活動と独自の採用・育成戦略がある。会社の知名度向上には、地域貢献活動やスポーツイベントへの協賛が大きく寄与しており、これらの活動を通じて、地域密着型企業としてのブランドイメージが定着している。採用においては、当社の価値観、特に「地元愛」を重視している。この価値観に共感する学生のみを対象としたインターンシップを実施することで、自社の価値観にあう人材を発掘している。さらに、採用時には応募者の価値観や将来の夢と、入社後の成長可能性を慎重に照らし合わせて長期的な視点で選考し、入社後は「従業員の幸福」を中心に据えた育成プログラムを展開している。
これらの取り組みにより、社員満足度は2003年の3.5ポイントから2023年に4.4ポイントへ上昇している。
大阪府摂津市 社会福祉事業 社会福祉法人成光苑https://swc-seikouen.or.jp/ |
売上高5,562百万円(2023年度) 従業員1,000名
【10年後の未来を見据え育み続ける独自の組織風土】
「10年後も地域の人が一番頼りにできる社会資源になっている状態」をありたい姿に掲げ、京都北部郊外と大阪都市部を中心に、地域と密着した社会福祉事業(高齢、障がい、保育)を展開している。さらに、地域の特性に応じた農福連携や商福連携、行政との協働による地域コミュニティー活動など、社会課題の解決につながる多様な活動も進めている。それらの活動は、創業以来の「進取の精神」や、「受けた相談には必ず何らかの答えを」という方針で培ってきた「断らない組織風土」が支えている。
こうした活動は国の政策として「地域の総合相談窓口」(2016年)が打ち出される前から進めており、福祉や社会福祉法人の在り方を追求しながら変革を続ける組織風土こそが、同法人の独自能力であり、今後、環境が変化しても「一番頼りにできる社会資源」としての役割を果たすための礎になっている。
【部門横断活動によるリーダー人財の育成】
部門横断活動によるリーダー人財の育成は、組織の成長と発展を支える重要な取り組みとなっている。部門横断活動として推進している、経営品質向上活動、ISO、農福連携といった各種プロジェクトや委員会活動が、日々の業務運営を支えるとともに、高い視座をもった経営幹部やリーダーの育成に貢献している。
同法人は、特性の異なる離れた地域(郊外と都市部)において、3分野(高齢、障がい、保育)で83拠点を構える規模まで成長を遂げている。その要因の一つが、こうした部門横断活動によるリーダー人財の育成にある。日常業務においては、各施設長に権限委譲を行う一方で、部門横断活動によって、農福連携など部門間の相乗効果が期待される事業を開発している。
【質の高いサービスを支える規範と制度】
創業以来こだわってきた「質の高いサービス」の提供を通じて、長年にわたって利用者や家族、地域住民との強い信頼関係を築いてきた。その信頼関係を土台として、多くの利用者が紹介を通じて集まっている。利用者へ提供する「質の高いサービス」は、全スタッフが携行する「和願愛語」(法人設立の想いや法人理念、サ―ビス目標、経営方針等の7項目をまとめた冊子)を中心とした規範と、ISOや人事システムといった制度の両面から支えられている。これらの仕組みは形式的なものでなく、現場の声を反映しながら継続的に進化を続けており、質の高いサービス提供を支える基盤となっている。
深刻な人手不足が続く福祉業界において、業界に先駆けて外国人やシニアの活用も進めてきた同法人では、サービスの質や職員の専門性を高めつつ、ICTやDX等を活用することで、利用者にとっての最適なサービス提供を目指している。